※こちらのページでは、2018年1月10日から6回にわたって連載された「幻冬舎GOLD ONLINE」の記事を転載しています。
オリジナル記事はこちらからご確認ください。
【第1回】売上&経費・・・自宅教室の経営で押さえておくべき二つの数字
本連載は、株式会社Libra Creationの代表取締役で、経営コンサルタントとして活躍する高橋貴子氏の著書、『趣味から卒業! しっかり稼げる自宅教室の開業・集客バイブル』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋し、数字を味方につけて成功させる「自宅教室経営」のノウハウを説明します。
利益を残すには、売上を上げるか経費を下げるしかない
私のところに相談にいらっしゃる教室の先生の悩みベスト2は、集客と収益です。
集客についてはゼロからスタートをしてもプラスになるだけです。ところが収益改善の話は、うまくいってゼロスタートです。場合よっては、赤字から黒字転換を目指さなくてはいけないケースも多々あります。
なぜ教室経営は赤字になりやすいのでしょうか。理由は二つあります。
一つは業界体質、もう一つは先生のお金に対するマインドが大きな要因です。まず、収益改善するうえで押さえておきたい二つの数字があります。それは「売上」と「経費」です。本当はもっと細かい数字もありますが、ざっくりいうとこの二つです。
売上から経費を引くと利益になります。利益を残すには、売上を上げるか、経費を下げるかのどちらかです。
料理教室なら「付加価値」「コンセプト」が重要
経費については、特に原価の部分についてはあまり下げられない業界事情があります。これも料理教室業界全般の特徴ですが、原価率がとても高いのです。場合によっては材料費率が70パーセントという教室もザラにあります。1人4000円の受講料で2800円という場合もあります。
これを正当な価格にしたい場合のネックになるのが、「業界体質」と「先生のマインド」です。
自宅料理教室は、「趣味」でやっている先生と「仕事」でやっている先生が混在します。趣味の先生が原価70パーセントレベルで受講料を決めた場合、生徒さんが比較するときにどうしてもお得感があるのは否めません。そのため、近隣周辺の教室の値段を見て価格を決めると、どうしても安価になりやすいのです。
だからこそ、料理教室関係は、価格だけではない付加価値(技術向上以外のメリットや先生の魅力)やコンセプトがどうしても重要になってくるのです。そこがクリアできないといつまでも赤字体質から脱出できません。心してかかる課題の一つです。
【第2回】10年続く自宅教室に・・・黒字体質を実現する「方程式」とは?
今回は、自宅教室の黒字体質を実現する「方程式」を紹介します。
重要なのは、生徒数・レッスン単価・リピート率
教室運営を継続するうえで一番ネックになるのは収益です。継続という意味では、生徒さんが10年も通ってくださる教室もたくさんあります。
ただ、内情を伺うとほぼゼロ収益、もしくは、少しばかりの収益が出るレベルのギリギリの運営をしている教室も多いのです。この状態では先生のモチベーションも上がりません。せっかくなら、好きな仕事を長く続けられるのがいいですよね。
「生徒数×レッスン単価×リピート率」
この方程式が、売上をチェックするうえで指針になる基本の方程式です。前年と比較してどこに重点を置いた活動をしていくのかという指針にもなるので、ぜひ覚えておいてください。
目標をきちんと立てて「行動計画」を作る
この式の意味合いを解説します。まず生徒数。当然ですが、生徒さんを増やすことができれば売上がアップします。新規とリピートどちらに取り組むかは教室の性質で異なりますが、単純に数を増やす方法です。
次にレッスン単価。単価をアップできれば売上アップになります。ただし、改善の提案をする場合に先生の抵抗が多い領域ですが。
そしてリピート率。1人の生徒さんに何回通ってもらえるか、ここも大きな要因になります。
この三つは掛け算になっているのがポイントです。仮にレッスン料金を上げることができなくても、生徒数とリピート率が上がれば売上はアップします。実際に計算してみましょう。
【生徒数1.3倍×レッスン料金1倍×リピート率1.5倍=1.95倍】
つまり、月の売上が20万円だった場合、39万円になります。これは2倍に近い数字です。生徒さんを1.3倍、リピート率を1.5倍というのはそんなに難しいでしょうか。
こちらの掛け算もその年の目標によって変化させていけば、毎回2倍とはいわなくても、ゆっくりと成長させて長続きする教室にできます。
問題は、無意識でなんとなく成り行きで経営を続けていくことです。目標をきちんと立てて行動計画を作れば、そんなに負荷をかけることもなく、継続的な教室運営をすることができるようになります。
【第3回】自宅教室の運営・・・重視すべきは新規顧客か? 既存顧客か?
今回は、自宅教室の運営において、新規顧客・既存顧客のどちらを重視すべきか探ります。
古くから通う生徒さんだけなら、先生も楽だが・・・
一般的な数字だけの効果でお話すると、新規顧客の獲得に関わる経費は5倍、顧客離れを5パーセント改善すれば利益は25パーセント改善、全体の売上はコアな2割のファンが作っている、といわれています。
この話を鵜呑みにすれば、どうしても活動指針は既存顧客寄りになりがちです。
もちろん、古くから通ってくださっている生徒さんだけで構成されているなら、慣れ親しんでいるし先生も楽だと思います。でも、生徒さんの環境が変わることは(転勤・出産など)先生がコントロールできることではありません。
既存の生徒さんを大切に、3割ぐらい新規を取る体制を
ですから、一つの指標としての数字のイメージは「新規3割:既存7割」くらいで運営できるといいのではないでしょうか。
私自身は「新規4割:既存6割」あたりを目指していました。これができるのは、私のクラスがほとんどコース制だったことも大きな要因です。コース制だと、いつか卒業する時期が来ます。
そういう意味では、新規の生徒さんを募集し続ける必要があります。その代わり、教室はいつでもフレッシュな状態で新陳代謝を繰り返すため、新コース作りや価格改定をしやすいというメリットもありました。コースを卒業したらそのままご縁が切れてしまうのでは、と心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、その後の運営次第だと思います。
私が目指した安定運営は「既存の生徒さん数の母数を増やすこと」でした。既存の生徒さんともメルマガなどでコンタクトを取りながらイベントレッスンなどに来ていただいて、細く長くおつき合いする方法を取りました。
新規の生徒さんを獲得するためには、稼働日数の限界値から、既存の生徒さんに卒業していただき枠を空ける必要もあります。毎月お会いしていた人が半年ぶりになったとしても、全体の母数が増えて教室のファンが多くなっていれば、新コースを立てたときやイベントレッスンを告知したときにすぐに満席になるため、結果として経営が安定します。
母数が増えるということは、それだけあなたの教室のファンを潜在的に増やしていくことになるので、既存の生徒さんも大事にしつつ、3割ぐらいは新規を取っていけるような体制を取っていくことをおすすめします。
【第4回】適正な教室価格を「顧客心理」から設定する方法
今回は、適正な教室価格を「顧客心理」から設定する方法を見ていきます。
「収益が出にくい価格」をつけている教室は多いが…
価格設定に悩む先生はとても多いことを実感しています。特に近隣教室の価格を見たり、原価を計算したりすると、どうしても収益が出にくい価格をつけてしまいがちです。
そんなときに必要になる概念が「顧客心理から見る三つの価格」なのです。私が思う三つの価格とは①絶対価格、②相対価格、③感情価格です。
それぞれ具体的に説明します。
- ①絶対価格
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たとえば、仕入100円の商品は100円以下では売れない、というような原価に利益を乗せることを前提とします。
絶対赤字になるような設定はできないため、仕入100円なら販売価格は100円以上になります。絶対価格のイメージは仕入原価を下回らない価格です。
- ②相対価格
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相対価格は、家電量販店などでよく見かける「他店比較対抗価格」です。
比較だけで買うため、商品特性そのものに差異がない場合につきやすい価格で、市場の需要と供給の度合いによっても変動します。近隣価格を気にして値づけする場合にも、相対価格になります。
「いくら払ってもいい」と思わせるレッスン内容が必要
- ③感情価格
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感情価格は趣味の領域で発揮される価格です。たとえば、収集癖のある人など、コレクターの間では信じられないような高い値段がつくものでも、その世界では当たり前といえるため、感情価格と呼ばれます。
教室の価格は、この「感情価格」で思わず申し込んでしまう! という価格の領域までいくようなレッスン内容と料金が理想です。まさにオンリーワンになるので、他の教室と比較されることもなく指名買いで申し込んでいただけます。
感情を動かすレッスン内容も価格戦略の一つです。
【第5回】自宅教室を成功に導く「目標数字」のコントロール術
今回は、自宅教室を成功に導く「目標数字」のコントロール術を見ていきます。
年間計画を立てれば、おのずと集客の動きが決まる
教室の経営は「趣味の自宅開業」からスタートする場合が多いので、売上目標や年間計画を立てずに始める方が多いことを、コンサルを始めてから知りました。正直、とても驚きました。
なぜなら、私自身は会社員でかつ営業職からの独立開業でしたので、数字を最初に考えるのが当たり前だったのです。営業の数字は、企業が存続発展するための必達数字として上から降りてくるだけでした。ですから、自分が独立したときには、まずどこを目標にするのが最適なのかを考えました。
そこで私は、まずは会社員の年収を目指すことにしました。ざっくり収益を考えたときには、ほしい金額の倍ぐらいの売上を目指すイメージです。20万円の手取りがほしければ、40万円の売上のイメージです。開業当初の皆さんのお話を伺っていると、手取りが15万円(売上30万円)ぐらいを希望する方が多いように感じました。
年間売上を組む場合には、それを月々の実行目標に落とし込まなくてはなりません。毎月同じペースで働いて、同じペースで集客できるとも限りません。だとすると、月の変動値も含んで、毎月の目標値とそれを達成するための必要人数が出てきます。
その人数を集めるためには何をしたらいいのか。ブログやFacebookをどう活用するか、どの時期に募集をかけて、どの時期に集中的に集客をするかなど、年間計画を立てればおのずと集客の動きが決まってきます。
季節のイベント等を意識して「行動計画」を練る
ただ漫然と「集客できない」という事象に流されるのではなく、積極的に数字をコントロールして、そこに合わせて集客していくイメージをもちましょう。
たとえば、人の気持ちが新しいことを始めるのに向いている4月などは、絶好の機会ですから、新生活応援キャンペーンなどもできます。10月~12月は、ハロウィンやクリスマスなど何かとイベントが多い季節なので、イベントレッスンの予約が入りやすいです。
すべて計画から逆算して行動が決まります。
4月生の予約がほしいなら、2月頃には概要もすべて決まり、募集をかけているイメージです。目標数字をコントロールしようと思ったら、必ず行動計画と一致してきます。ゴールから設計して導線を組むという考え方は、WEBの設計も売上計画も一緒です。
【第6回】自宅教室の黒字を維持・拡大する「お金の使い方」
今回は、自宅教室の黒字を維持・拡大する「お金の使い方」について見ていきましょう。
好調な時の収益を「次の投資」に充てられるかがカギ
教室を運営して収益が残った場合、そのお金は全部使っていますか? また、赤字スレスレで経営している場合でも、その後の飛躍を考えて先行投資などしていますか?
ここでいう「投資」とは、「株や不動産」などの投資のことではありません。教室を経営して黒字を維持していく、または拡大していくために必要な「自己成長」のための投資です。もう少しわかりやすい教室の事例を挙げましょう。
あるレッスンがすごく人気になり、集客もでき、売上も上がったとします。その資産があるときに、「次の戦略」を考えられるかということです。
たとえば、人がたくさん来て認知されるようになったら、同時展開で「他のクラス」にも誘導して、さらに継続して通ってもらう。また、いまひとつ人気のないクラスを閉鎖して、人気クラスの枠を増やす。人気クラスの継続クラスを作り、通い終わる前に提案する、などがあります。
売上が好調なときに、その収益を次の投資に充てることができるかどうかが、結果的には黒字体質を作る一つの境目になるようです。ちなみに私自身は、人気クラスができるたびに不人気クラスを閉鎖し、新しいクラスをリリースして半年ごとにリニューアルしながら教室を継続してきました。
知識の習得はもちろん、宣伝にもお金をかける
もちろん、自分自身の研さんも欠かせません。新しい知識や技能を学んだら、それを教室に還元してレッスンを作る、また、収益が出たら宣伝媒体(HPやブログ)などにもお金をかけていく、そんなことを繰り返してどんどん売上を拡大していきました。
途中、売上低迷も経験しましたが、トータルで6年連続右肩上がりの年度末決算を迎えることができているのは、この「継続的な投資」によるものだと思っています。うまくいって収益が残っているときほど、効果を見極めたうえで自身の学びや周辺環境整備(WEBツール全般を含む)に投資してほしいです。
現状維持は停滞ではなく衰退になります。うまくいっているときにこそ、未来のために先行して投資することが黒字体質を維持し続けるコツになります。
【最終回】「固定観念」を手放して教室経営を成功に導く方法
今回は、自宅教室の黒字を維持・拡大する「お金の使い方」について見ていきましょう。
答えを知りたければ、まず自分で行動してみる
私はコンサルの最中によく「なぜそう思うの?」とクライアントに問いかけています。すると大抵皆さんは「え?」という顔をされます。
はい、そうなんです。
ご自身のなかで「正しい」と信じていることを客観的に見た場合、「それだけが答えではない」という場合もあります。そもそも「正しい」という概念自体が違っている場合もあるのです。
自分の常識は他人にとっては非常識という思考は、先生自身に限ったことではなく、生徒さんへのサービスを構築する際にも影響します。
たとえば、一番多いのはレッスンへのお誘いについての壁です。先生自身が生徒だったときに感じたように、「しつこいと思われるんじゃないか、嫌われるんじゃないか、と不安でなかなか案内できない」というお話をよく伺います。
しかし生徒さんはあなたではありません。あなたは嫌だったかもしれませんが、生徒さんは全然平気かもしれないのです。もちろん、あまりにも気持ちを無視したようなタイミングや、いい方をすれば嫌われるかもしれませんが、まずは聞いてみないとわかりません。そうやって、自分にはない性格をもった人とコミュニケーションをとっていく必要があります。
もし、あなたが人からどう思われるか不安があって答えを知りたければ、まずは実際に聞いてみる、行動してみることが大切です。そして、意を決して聞いたわりには、案外あっさりと何とも思われていなかったと気づかされることが多いはずです。人は自分が思うほど、他人に興味をもっていないので、あまり過敏に反応する必要はありません。
つまり、「自分の固定概念」と「執着心」はないほうが楽です。執着は嫉妬も生みますし、自分も苦しくなります。よく思われたい、嫌われたくないと思えば思うほどそれが執着になり、相手も自分も縛ることになります。〝飛常識な思考〞においては、執着心を解放することもテーマの一つになります。
たとえば、他の教室に行った生徒さんに対して、ことさら冷たくしたり、挙句の果てに「もう来なくていい」なんて思ったりするのはナンセンスです。その生徒さんは他のことも習いたかった、タイミングでそういう時期が来たというだけだと思えば、そんなに不快な思いにとらわれることもありません。執着はしないことです。実際にまた来てくださる可能性もあるわけですから。「追えば逃げる」のは、お金も男性も生徒さんも同じです。
自分の常識の範囲で、すべての人が想定内に動いてくれるわけではありません。だからこそ私は、「自分軸の常識」はいらないと思っていて、いつでもニュートラルで、素で振る舞えるのが理想の状態だと思います。
この状態であればいつでも楽しいですし、そんな楽しさに共感してくれる方が自然と周りに集まってきます。人は明るいところに引き寄せられるので、結果として、磁石に吸い寄せられるように人が集まってきます。私が知っている超人気教室の先生も「磁力のある女性」が多いです。
「常識」は自分が作り出している幻想の壁!?
「自分軸の常識」はこれはできないという「限界の壁」と似ていて、この限界の壁を作っているのは、他でもない自分自身です。
実は、限界の壁なんて幻想で、人には本当は限界値などなく、いつでも自由になんでもできるのではないかと思っています。しかし、現実には人それぞれの事情やしがらみもあるため、難しいことかもしれません。
ただ、もしも現実がそうだとしても、「常識は自分が作り出している幻想の壁」だとすれば、その壁はいつでも簡単に消し去ることもできるはずなのです。そして壁がなくなれば、ダメだと思っていたことでも打開策が見つかり、現実もそれに応じて変えていくことができます。
だから私は、「障害=壁」と思われているものは、自分が〝飛常識な世界〞を信じた瞬間から「未来を開く扉」になると信じています。扉を開く鍵は、あなた自身です。このマインドがあれば、教室運営の延長線上に起こるさまざまな障害も軽々と乗り越える、しなやかな経営ができると思います。
教室を長く継続したいと思うなら、数字の管理は必須事項です。数字は自分が主体になって考えると、コントロールできるようになります。売上も集客も計数管理ができるようになると、改善点が見えて軌道修正ができるようになります。
数字への苦手意識を減らして上手につき合うことが、長く継続できる教室を作る一つのコツです。